フッ素有機化学Fluoroorganic Chemistry

研究テーマと特徴

  • 含フッ素化合物の反応性を最大限に活かした新しい合成法の開発
  • フッ素の特性を活かした機能性材料の創出
  • 含フッ素分子の構造の特徴を活かした生理活性物質創出

学術界で育まれた有機化学の最先端の科学的知見と、産業界で培われてきたフッ素化学関連技術を融合することにより、革新的な技術を創出し、先駆的な化学製造プロセス、機能性材料、生理活性物質の創生につなげることを目指しています。

含フッ素化合物の反応性を最大限に活かした新しい合成法

含フッ素化合物の反応性を利用して,有用物質をなるべく環境負荷をかけずに合成する新しい方法を開発しています。
ポリカーボネートやポリウレタンの生産に利用される工業原料ホスゲンは、高い毒性が問題になっています。当研究室では、環境低負荷なホスゲン代替である含フッ素炭酸ジエステル を、地球に豊富に存在し毒性の低い二酸化炭素を原料として合成することに初めて成功しました。

二酸化炭素を原料とした含フッ素炭酸ジエステルの合成

フッ素の特性を活かした機能性材料創出

含フッ素化合物の新しい反応を開拓してフッ素がもつ特性を有機材料と複合化した化合物を創っています。
オレフィンメタセシスは炭素- 炭素二重結合を組みかえる反応ですが、フッ素原子が直接結合した二重結合は反応しづらいことが問題です。当研究室では、工業的に安価なテトラフルオロエチレンを用いたオレフィンメタセシスに有効な触媒を開発しています。生成物は環境低負荷な冷媒や高分子の原料となることが期待されます。

テトラフルオロエチレンを用いたオレフィンメタセシスの触媒

含フッ素分子の構造の特徴を活かした生理活性物質創出

生体は水素原子とフッ素原子の大きさの違いを識別できません(ミミック効果)。一方、含フッ素構造は疎水性、脂溶性、代謝を受けにくいなどの特異な性質を示します。当研究室ではこれらの含フッ素分子のもつ特徴を組み合わせて、新しい医薬の有効成分になる化合物を見いだす研究をしています。
標的分子に対して高い特異性と親和性をもつペプチドやタンパク質、核酸などは、従来の化学合成医薬品と比べて副作用の恐れが少なく治療効果が高い分子標的薬として期待されます。しかしこれら親水性の高い物質は、細胞膜透過性が低いという大きな問題点があり、細胞内の疾患標的に作用させることは困難です。当研究室では、細胞膜との強い相互作用が期待できる多フッ素化置換基(RF基)の導入により、生体分子の膜透過性を向上させる戦略を立案しました。実際にペプチドや核酸分子の細胞膜透過性の向上を確認しています。

細胞膜透過性を指向した生体分子の合成と応用

東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻

特任教授 野崎 京子
特任准教授 相川 光介
特任助教 秋山 みどり

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東京大学国際オープンイノベーション機構
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